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東京地方裁判所 昭和61年(モ)4564号 判決

債権者

コンデ・ナスト・パブリケイションズ・インコーポレーテッド

右代表者

ハロルド・ジー・メイヤー

右訴訟代理人弁護士

桝田淳二

小泉淑子

鳥海哲郎

右訴訟復代理人弁護士

名取勝也

右輔佐人弁理士

島田義勝

債務者

有限会社クマノ

右代表者代表取締役

熊野正典

右訴訟代理人弁護士

石川幸吉

作井康人

右輔佐人弁理士

佐々木功

川村恭子

主文

一  債権者と債務者との間の当庁昭和六〇年(ヨ)第二五七七号商標権仮処分申請事件について、当裁判所が昭和六一年六月四日にした仮処分決定を認可する。

二  訴訟費用は債務者の負担とする。

三  ただし、右仮処分決定添付別紙目録を本判決添付別紙目録(一)のとおり更正する。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  債権者

主文一、二項と同旨

二  債務者

1  主文第一項記載の仮処分決定(以下、「本件仮処分決定」という。)はこれを取り消す。

2  債権者の本件仮処分申請を却下する。

3  訴訟費用は債権者の負担とする。

第二  当事者の主張

一  申請の理由

1  債権者は、一九〇九年以来ファッション雑誌「VOGUE」を発行しているアメリカ合衆国の法人であつて、次の商標権(以下、「本件商標権」といい、その登録商標を「本件登録商標」という。)を有する。

(一) 登録番号  第一六二九三一九号

(二) 出願日 昭和五二年一一月一七日

(三) 出願公告日 昭和五八年二月二日

(四) 登録日 昭和五八年一〇月二七日

(五) 指定商品

第二一類、バンド類、頭飾品、造花

(六) 登録商標

別紙商標公報記載のとおり

2  債務者は、各種ベルト及び洋装雑貨と袋物の製造、販売を主たる業務とする会社である。

3  債務者は、申請外ヤング産業株式会社(以下、「ヤング産業」という。)の製造、販売にかかる、別紙目録(一)記載の標章(以下、同目録記載の番号に従い、「債務者標章1」ないし「債務者標章12」といい、これを総称して「債務者標章」という。)の付されたベルトを販売している。その他、債務者は、債務者標章を付したベルト、タグ(下げ札)、包装、宣伝用カタログを譲渡、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために展示している。

仮に、右販売等の事実の一部が認められないとしても、ヤング産業は、債務者標章を付したベルトを債務者以外の販売業者に対して販売したり、その宣伝、広告のために債務者標章を使用しているのであつて、債務者がヤング産業製のベルトを仕入れてこれを販売している以上、債務者標章の全部を使用する可能性は極めて大きい。

4  債務者標章は、本件登録商標と同一であるか、あるいは少なくとも類似している。

すなわち、本件登録商標の「VOGU-E」という語は、債権者が発行している雑誌の題号として極めて著名であり、それ自体、顕著な識別力を有しているところ、債務者標章は、これと同一であるか、あるいはこれを要部として含む標章であつて、その要部から生じる外観、称呼、観念のいずれにおいても本件登録商標と同一であるから、全体として類似するものである。

また、ベルトは本件登録商標にかかる指定商品に該当する。

したがつて、債務者による債務者標章の使用は本件商標権を侵害する。

5  債権者は、本件登録商標を使用した指定商品に関する商品化事業を準備していたところ、ヤング産業は、債務者標章をベルトに付して使用しているのみならず、指定商品二一類に関し、「CAS-A VOGUE」「SUNSEA VOGUE」なる標章を登録出願するなどしており、債務者も、前記のとおりヤング産業から右ベルトを購入して債務者標章を使用しているほか、その使用が正当である旨主張して争つているのであつて、本案判決確定に至るまでこれを放置しておいては、債権者に回復し難い損害が生ずることになる。

6  よつて、本件仮処分決定は相当であるので、本件仮処分決定を認可することを求める。

二  申請の理由に対する認否

1  申請の理由1及び2の各事実は認める。

2  申請の理由3の事実のうち、債務者が債務者標章7及び9の付されたベルトを販売した事実は認め、ヤング産業に関する事実は不知、その余の事実は否認し、主張は争う。

3  申請の理由4は争う。

4  申請の理由5の事実のうち、ヤング産業に関する事実は不知、その余の事実は否認し、主張は争う。

三  債務者の主張

1  債務者標章2ないし5は「SPO-RTIVO」が、同6ないし8は「SUNSE-A」が、同9ないし12は「CASA」がそれぞれ「VOGUE」と結び付いて一体のものになつた標章である。

ところで、「VOGUE」との語は、「流行」「はやり」「人気」などの意味をもつ英語、仏語であつて、日本国内においては、かなり一般化されている語であり、特に指定商品であるベルト等、流行に関係ある商品については特別顕著性を持ちえないものである。

したがつて、結合商標である右債務者標章については、「VOGUE」の部分に重点をおいて観察すべきではなく、標章全体についてこれを観察すべきであり、そうすると、右債務者標章は、外観、称呼、観念のいずれの点においても本件登録商標と類似しないといわなければならない。

2  仮に債務者が債務者標章を付した商品を販売した事実があつたとしても、これは、不特定多数の者に販売する意思はないまま、偶々債務者のもとに残つていた半端物ないし企画中止品を、債権者の特別な希望によつて販売したものであるにすぎない。しかも、債務者は卸売業者であつて、製造業者が商標を付した商品を小売業者等に販売しているにすぎず、その商標は、債務者との関係においては全く出所表示機能を有していない。したがつて、債務者の右販売行為が商標権侵害となる余地はない。

3  債務者の販売する債務者標章を付したベルトの製造業者であるヤング産業と債権者との間には、昭和五六年二月二三日和解契約が締結されたところ、同契約の第三項には、「法律上明らかに甲(債権者)の許諾なしに使用できる場合はこの限りでない。」旨の明確なただし書があり、ヤング産業において商標権を有するか又はその商標登録出願につき出願公告を経た場合には、その標章を使用する権限のあることを明らかに認めているものである。したがつて、債務者標章を付したベルトの債務者による販売は、右ただし書の場合に当たるから、適法である。

4  債権者は、本件登録商標を指定商品につき全く使用していない。つまり、誤認混同の対象となる商標権者の商品は存在しないのであるから、そのような場合に商標権侵害を主張することは、権利の濫用であつて許されず、また保全の必要性もない。

四  債務者の主張に対する債権者の反論

1  債務者の主張1ないし4はいずれも争う。

2  債務者が主張するとおり、債権者は、現在本件登録商標を指定商品について使用していないが、これは次の理由によるものである。

すなわち、債権者は、本件登録商標の出願後、指定商品をはじめとするいわゆるファッション関連商品につき、日本における右商標の使用権者を選定する準備をしていたところ、本件登録商標の出願公告前である昭和五五年ころ、債権者から許諾を受けたと偽つていた申請外株式会社アート・アンド・クラフト及び同川島隆がヤング産業に対し、前記雑誌「V-OGUE」の表紙カバーを使用した商品化事業を許諾したとして、ヤング産業において、別紙目録(二)の表示又は右表紙カバーを付したベルト、札入れその他の商品を製造販売するようになつた。その後、一旦は、債権者との和解によつて、この製造、販売等が中止されたものの、昭和五八年夏ころから、ヤング産業において再び「VOGUE」、「VOGUE SPORTIV-O」との標章を使用し始めたため、債権者が、大阪地方裁判所に対して、この使用差止めの仮処分申請をするなどの経過があつた。

以上のとおり、本件登録商標が登録されて権利となつた昭和五八年一〇月二七日には、債権者とヤング産業等の間において、本件登録商標をめぐる紛争が生じていたのであつて、かかる状況の下で信用に値する使用権者を選定して日本における本件登録商標の商品化事業を展開することは、極めて困難であつた。

したがつて、債権者が本件登録商標を使用していないことをもつて、権利の濫用であるとか、保全の必要性に欠けるということはできない。

第三  証拠〈省略〉

理由

一申請の理由1及び2の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。

二1  申請の理由3の事実のうち、債務者が債務者標章7及び9が付されたベルトを販売した事実については、当事者間に争いがない。

2  〈証拠〉を総合すれば、次の事実が一応認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

すなわち、債権者訴訟代理人事務所の職員である申請外伊藤清信(以下、「伊藤」という。)は、昭和六〇年六月一三日、債務者の店舗を訪れ、下げ札にVO=01,VO=37,VO=40との記号番号が付されているベルト三本を、代金合計金五七〇〇円で購入した。これらのベルトのうち、VO=37とVO=40のベルトのバックル表面には債務者標章1が、VO=01とVO=37のベルトの下げ札の表裏両面、ベルトに巻いてある紙(以下、「巻紙」という。)には債務者標章6が、VO=40のベルトの下げ札の表裏両面、巻紙には債務者標章8がそれぞれ付されている。更に伊藤は、同年七月一一日にも債務者の店舗を訪れ、下げ札にVO=1(二本)、VO=22,VO=26,VO=32との記号番号が付されているベルト五本を、代金合計金一万〇二〇〇円で購入した。これらのベルトのうち、VO=1の内の一本を除くすべてのベルトの下げ札の表面には債務者標章2が、VO=22のベルト本体の裏面には債務者標章3が、VO=1の内の一本とVO=26,VO=32の巻紙には債務者標章4が、その下げ札の裏面には債務者標章5がそれぞれ付されている。

以上の事実によれば、債務者が、ベルト自体、巻紙又は下げ札に債務者標章1ないし6及び8の付されたベルトを販売した事実を一応認めることができる。

ところで、債務者は、債務者の債権者に対するベルトの販売が商標権侵害になる余地はないとして、るる主張する。

しかしながら、その根拠として掲げる点は、いずれも到底首肯するに足りず、右主張は採用し難い。すなわち、まず、債務者に業として販売する意思がなかつたとの趣旨に解される点については、仮に債務者の販売した前記ベルトがいわゆる半端物ないし企画中止品であつたとしても、そのことから直ちに債務者に業として販売する意思がなかつたと推認するのは困難であるし、ほかにこれを疎明するに足りる証拠はなく、かえつて、先に認定した販売行為の内容及び〈証拠〉に照らせば、債務者は前記販売行為の際、業として販売する意思を有していたことが明らかというべきである。また、債務者が第三者によつて商標を付された商品を取り扱つたにすぎないとの点も、何ら商標権侵害を否定する理由とはなりえないことはいうまでもない。

3  次に、債務者が債務者標章10、11、12を付したベルトを販売した事実を一応認めるに足りる証拠はない。そこで、債務者によつて、債務者標章10、11、12が使用されるおそれがあるか否かについて検討する。

〈証拠〉によれば、「ヤング産業株式会社会社案内」と題するパンフレットの「商品化権取得キャラクターとブランドのご紹介」という欄に債権者標章10が記載されていることが一応認められ、〈証拠〉によれば、昭和五九年七月一二日当時、大阪市東住吉区鷹合四丁目二番一〇号所在のヤング産業ショールーム内のベルト展示台に、債務者標章11が使用されていることが一応認められ、〈証拠〉によれば、昭和六〇年六月三日、大阪府吹田市内のダイエー吹田店において、下げ札の表裏両面、巻紙に債務者標章12が付されたベルト八種類が売られたことが一応認められ、〈証拠〉によれば、前記債務者方店舗で売られたベルトのうち一本(VO=40)を除いたもの及び右ダイエー吹田店で売られたもののすべての下げ札の裏面には「YOUNG SANGYO CO LTD.」という表示が付されていたことが一応認められる。

一方、〈証拠〉によれば、債務者は、ヤング産業とは一〇年以上の期間にわたつて継続的な取引関係があり、その間に六〇ないし七〇種類のベルトを仕入れていること、債務者の取り扱つた、「VOG-UE」という文字の含まれた標章が付されたベルトは、すべてヤング産業から仕入れたものであることが一応認められる。

以上の事実によれば、債務者は、ヤング産業製造のベルトを販売することによつて、債務者標章1ないし6及び8を使用したものであつて、ヤング産業が使用している債務者標章10、11、12についても使用するおそれがあるものと一応認めるのが相当である。

4 以上1ないし3で確定した事実及び弁論の全趣旨を総合すれば、債務者は今後とも債権者主張の態様により債務者標章を使用するおそれがあると一応認めるに十分である。

三次に、債務者標章1ないし12の使用が本件商標権を侵害するか否かについて判断する。

1  本件登録商標は、別紙商標公報記載のとおり、アルファベッドの大文字で、明朝体により(特に記載しない限りは、以下同じ。)「VOGUE」と横書きされたものである。

一方、債務者標章は別紙目録(一)記載のとおりであつて、その各構成はそれぞれ次のとおりである。

債務者標章1は本件登録商標と同一の構成からなるものである。

債務者標章2は、Vが大文字のほかは小文字を使用して、やや変型の字体で「Vogue」と横書きされ、その下段の中央部分から右寄りに小さく大文字で「S-PORTIVO」と「file_3.jpg」とが一連に付されている。

債務者標章3は、大文字で「VOGU-E」と横書きされたものの下段に、同じ大きさの大文字で「SPORTIVO」と横書きされ、その右肩に小さく「file_4.jpg」が付されている。

債務者標章4及び5は、大文字で「V-OGUE」と横書きされたものの下段に、小さく大文字で「SPORTIVO」と横書きされ、その右に「file_5.jpg」が、少し間隔を空けて又は一連に付されている。

債務者標章6は、大文字で「SUNSE-A VOGUE」と横書きされ、初めのSと中央部のVとが他の文字よりやや大きい文字で構成されている。

債務者標章7は、大文字で「SUNSE-A VOGUE」と横書きされ、「SUNSEA」と「VOGUE」との間にわずかながら間隔が空いている。

債務者標章8は、大文字で「VOGU-E」と横書きされたものの上段に、これより小さい大文字で「SUNSEA」と横書きされている。

債務者標章9は、大文字で「CASA V-OGUE」と横書きされ、「CASA」と「V-OGUE」との間にわずかながら間隔が空いている。

債務者標章10は、ゴチック体であることのほかは右9と同様の構成であるものの下段中央部分に、カタカナで小さく「カサ ヴォーグ」と横書きされている。

債務者標章11は、大文字で「CASA」と横書きされたものの下段に大文字で小さく「VOGUE」と横書きされている。

債務者標章12は、大文字で「CASA V-OGUE」と横書きされ、中央のVの文字が他の文字より大きく、しかも、下方に少し突き出ている。

以上のとおり、債務者標章1は本件登録商標と同一である。また、債務者標章2ないし5は「VOGUE」と「SPORTI-VO」とが、債務者標章6ないし8は「SUNSEA」と「VOGUE」とが、債務者標章9ないし12は「CASA」と「VOG-UE」とがそれぞれ結び付いて構成されているものである。

ところで、前記争いのない事実によれば、「VOGUE」は、債権者の発行する雑誌の題号であるところ、〈証拠〉を総合すれば、次の事実を一応認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

すなわち、「VOGUE」誌は、債権者により一九〇九年から発行され、現在ではアメリカ、フランス、イタリア、イギリス、オーストラリア、西ドイツで出版され、世界各国で発売されており、日本においても昭和二八年ころから右各国版が発売されているが、洗練されたアメリカやフランスの最新ファッションを知ることができる高級ファッション専門雑誌として、デザイナーのみならず、一般人の間でも広く知られているほか、用語辞典にも、「VOGUE」の項に右「VOGU-E」誌の紹介をしているものがある。

右認定の事実によれば、「VOGUE」の標章は、債権者の発行するファッション雑誌の題号として極めて著名であつて、その標章自体が服飾品の分野において強い識別力をもつものということができる。

これに対し、「SPORTIVO」、「SUNS-EA」、「CASA」の標章は、いずれもさほど特徴があるとはいえないし、また、これらと「VOGUE」との間に強い結び付きがあることを疎明するに足りる証拠もない。

以上に説示した諸点、特に、債務者標章2ないし12において、「VOGUE」の部分を外観上他の部分から明確に区別して認識しうること及び「VOGUE」の標章がファッション雑誌の題号として著名であることに照らすと、債務者標章2ないし12からは、いずれも少なくとも「ヴォーグ」又は「ボーグ」の称呼を生じることが肯認できるところ、これは本件登録商標から生じる称呼と同一であるのであつて、結局債務者標章2ないし12は本件登録商標と類似するものといわねばならない。

2  商品ベルトが本件登録商標にかかる指定商品に該当することはいうまでもない。

3  したがつて、債権者標章1ないし12をベルトについて使用することは、本件商標権を侵害することになる。

四債務者は、自己の債務者標章の使用が債権者・ヤング産業間の和解契約により適法である旨主張する。

そこで検討するに、債権者とヤング産業との間に標章の使用に関する和解契約が成立したことは、後に認定するとおりであるところ、〈証拠〉によれば、右和解契約においては、第三項として、ヤング産業が別紙目録(二)の表示等、すなわち、「VOGUE」又はこれに類似する標章等を使用しない旨の不作為の約定及びこれに続く債務者主張のただし書、すなわち、「法律上明らかに甲(債権者)の許諾なしに使用できる場合はこの限りではない。」との文言が設けられていることが一応認められる。また、〈証拠〉によれば、ヤング産業は、いずれも同じ大きさの大文字で一連に表記した「SUNS-EA VOGUE」及び「CASA VOGUE」の標章につき、指定商品を第二一類装身具等として商標登録の出願をし、前者につき昭和五八年一〇月二〇日、後者につき同年一月八日それぞれ出願公告を経たことが一応認められる。しかしながら、ヤング産業が右出願につき商標登録を経由したことや債務者標章と同一の標章につき指定商品を第二一類とする商標権を取得したことを疎明するに足りる証拠はない。

ところで、商標登録の出願をした者は、登録を経て初めて、しかも、その登録商標と同一の標章に限つて指定商品につき独占的使用権を取得しうるものである。しかるに、ヤング産業は、右に認定したとおり、二つの標章の出願につき出願公告を経ているにすぎないばかりか、その出願にかかる標章と債務者標章(特に債務者標章6ないし12)とはいずれも同一性を欠くことが明らかである。したがつて、債務者が右出願公告を経たとの事実は、いずれにしても、前記和解契約におけるただし書の場合に当たるとは到底解し難く、何ら債務者による債務者標章の使用を正当化するものではないというべきである。債務者の前記主張も採用することができない。

五債務者は、債権者が本件登録商標を指定商品について使用していないので、本件申請は権利の濫用であると主張するので、この点について判断する。

債権者が本件登録商標を指定商品に使用していないこと自体は、当事者間に争いがない。〈証拠〉を総合すれば、次の事実が一応認められる。

すなわち、ヤング産業は、昭和五三年一〇月七日、債権者から許諾を受けていると称する申請外株式会社アート・アンド・クラフト及び同川島隆との間で、前記「VOGUE」誌の表紙カバーを使用した商品化権使用契約を締結し、その後この契約に基づき、別紙目録(二)の表示又は右表紙カバーを付したベルト、札入れその他の商品を製造販売するようになつた。そこで債権者は、右申請外人らを相手方として、大阪地方裁判所に対し、右の表示の使用差止めの仮処分を申請し、昭和五五年九月九日、右申請外人らが債権者から許諾を受けていないのに他の者と商品化権使用契約を締結したことを認め、右表示等を使用しないこと等を内容とする裁判上の和解が成立した。そしてこれを受け、ヤング産業は、同月一九日及び昭和五六年二月二三日、債権者との間で、それぞれ右表示等を使用しない旨の和解契約を締結した。しかしながら、ヤング産業は、昭和五八年夏ころから、「VOGUE」「VOGUE SPORTIVO」の標章を付したベルトの販売を始めたため、債権者は昭和五九年七月六日、大阪地方裁判所において、ヤング産業に対する右標章の使用差止めの仮処分決定を得た。その後も債権者は、昭和六一年八月二二日、大阪地方裁判所において、ヤング産業に対する本件の債務者標章1ないし9と同様の標章の使用差止めの仮処分決定を得た。

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六前記二及び五で認定、判断した債務者の侵害行為の態様、ヤング産業と債務者との取引関係、本件登録商標をめぐるヤング産業と債権者との紛争の経緯によれば、債務者の侵害行為をこのまま放置すると、債権者は本件商標権に関する許諾事業の遂行を阻害されるなどし、回復し難い損害を被るおそれがあることが一応認められ、保全の必要性があることは、これを一応認めることができる。

七よつて、本件仮処分決定は相当であるからこれを認可し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用し、なお、本件仮処分決定添付別紙目録を本判決添付別紙目録(一)のとおり更正することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官安倉孝弘 裁判官小林正 裁判官若林辰繁)

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